花嫁の手紙に書く内容が「暗い」と悩んでいる人が時々おられます。
「結婚式にふさわしく、澄み切った青空のような明るい話題を手紙に書きたいのに、両親との思い出を綴ったら暗雲が立ち込めたような内容になってしまった・・・」。
こんな時は、全面的に明るく書き直したりせずに、暗い話題を活かすよう助言をさせていただいており、むしろ私自身は、花嫁の手紙に暗い影のような一面があったほうがゲストの皆様の心に届く内容になると考えています。
それは結婚式場で働いた経験から、披露宴で花嫁の手紙を読むことが全体にどのような影響を及ぼすかを学んでいるからです。
一般に結婚式や披露宴に対して人が持つイメージは「幸せ」「楽しい」「嬉しい」「おめでたい」など明るい「光」のようなものばかりです。
このことから、自分たちの結婚式からは暗い「影」のような要素を一切排除して「光」だけで実現しようとする新郎新婦もおられます。
しかし、実際にはただ楽しいだけの光溢れる結婚式からは、そこそこの幸福感しか感じられません。
そのような結婚式に出席してみるとよく分かるのですが、会場を後にしながら「何かが足りなかったな...」という思いが拭えないのです。
「光」と「影」は一体であってこそ、美しいものだと思います。
例えば、洋画の最後に流れるエンドロールのBGMを想像してみてください。
明るい曲の中の途中で曲調がガラリと変わり、悲しみや寂しさ、苦しみを表現する部分に気づく思います。
そこから再び、鼓動のようなリズムで壮大なエンディングへと導かれていくのがまさに王道であり、見る人に感動を与えるクライマックスです。
私たちはなぜ、エンドロールのBGMに感動するのでしょうか?
その理由は、「そこに人の一生を感じるから」ではないでしょうか?
前置きが長くなってしまいましたが、私が言いたいのは「花嫁の手紙で影を表現することによって、披露宴の輝きをより豊かなものにできる」ということです。
ただし、ただ花嫁の手紙に暗い話題を盛り込めばよいというものではありません。
意味のない話題で終わることなく、その経験が自分の成長の糧になったことを一緒に伝えることが大切です。
例)仕事が忙しくて、なかなか父にかまってもらえなかった。
→父は朝早くから夜遅くまで仕事で忙しく普段はかまってもらえず寂しい思いをしたけれど、部活動で遠征したときには、試合を会場まで駆けつけて声援を送ってくれたことが嬉しかった。その時に「◯◯」と言ってくれたことに励まされました。...
例)幼い頃から病弱で病院への入退院を繰り返しており、友達ができなかった。
→幼い頃から病弱だった私が長い期間入院した時に、母はずっと付き添ってくれました。そして、なかなか友達ができない私にたくさんの本を読み聞かせてくれました。そのおかげで本が大好きになり、デザイン・編集の仕事を志すきっかけになりました。...
例)高校の頃に親と考え方が合わず、ケンカをして家を飛び出した。
→思春期の頃は、両親との考え方が合わず口論になったこともありました。そんな時も、いつも見守って温かさを感じていました。当時は自分のことしか考えられず、私はそれに甘えてばかりでしたが、現在は両親が私のためを思って言ってくれたこと、してくれたことに心から感謝しています。...
このように花嫁の手紙に暗いエピソードを書く時は、必ず明るい話題でフォローするように意識しましょう。
最後に一つだけ気をつけて欲しいことがあります。
明るい話題のフォローを助言すると「◯◯のことがあったので、私は成長することができました」と
自画自賛のように書く人がおられます。
実はこれでは披露宴のゲストに共感してもらうことができません。
あなた自身が「成長できた」と書くのではなく、その言葉をゲストの皆さまが感じられる表現を心がけてみてください。